Vol.7 野球留学:藤田 祥平さん
福岡東高校 → 米トロイ大学
高校時代は福岡県の強豪校、東福岡高校で活躍。卒業後、アメリカの四年制大学に進学。日本人留学生としては数少ない、1部リーグで1年生からレギュラーの座を獲得。同校スポーツマネジメント学部を卒業し2010年に帰国。現在は社会人として働きながら、プロリーグに挑戦中。
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アメリカの4年制大学1部リーグで、日本人では数少ないレギュラー選手として活躍した藤田さん。レギュラー選手になるためにはどうすればいいのか、凛とした志を語って頂きました。
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アメリカへの思い
小学生の時に一度、アメリカで野球をしたことがありました。フロリダ州でおこなわれた2週間のベースボールアカデミーに参加したのですが、その時本当に野球が楽しくて。でも当時は、一緒に参加していたアメリカやベネズエラの選手たちと英語でコミュニケーションをとることができず、もっと自分の言葉で話せたらなと思いました。だから、いつかもう一度アメリカに行こうと心に決めていました。アメリカでアスレティックトレーナーの勉強をしようと留学を決意したのは、小学生の時の経験が大きかったですね。
高校卒業後の進路として、日本の大学に進むことは考えていなかったので、野球部引退後、アメリカ留学について監督に相談をしました。監督は「厳しいからやめておけ」と。それでも自分はなんとかなると思っていましたし、楽しいイメージばかり持って、飛び込んでいくような勢いでした。はじめは母が少し不安がっていましたが、最終的には両親も応援し背中を押してくれました。渡米先は、暖かい場所に行きたかったので、アラバマ州の大学を選びました。留学前に日本で英語の勉強はしていたものの、実際に話してみると、全然通じませんでした。アメリカに住んでいたら英語はある程度話せるようになると安易に思っていましたが、全然、無理。そこから英語の猛勉強が始まりました。渡米後1年間、語学学校に通っている時は1日15時間、英語の勉強をしたこともありましたね。
野球無しではいられない
野球から離れ、以前から興味があったアスレティックトレーナーの勉強をするために留学をしたのですが、野球に未練がなかったかというと、そうではありませんでした。しかし、大学でアスレティックトレーナーの勉強と野球の両立は無理だと言われていたので、勉強のために野球への思いを抑えていました。それでも、思いは隠せないものです。フェンス越しに見えるグラウンドがあまりにもきれいで、この場所で野球ができたらどんなにいいだろうと憧れの気持ちが強くなっていきました。悩んだ末、やはり自分の中にある野球への思いが勝ち、アドバイザーへ相談。すると、大学チームのコーチへ話をしてくれ、トライアウトを受けることになったんです!
憧れが現実に
トライアウトは2日間に渡って行われました。1日目は私一人のために日を設けて頂き、バッティングや守備、ベースランニングをしました。 2日目は高校生のサーマーキャンプで試合形式の練習に参加。正直、1年間のブランクで感覚が鈍っているかなと思っていたのですが、監督からは「魅力的な選手だね。ウチに来なよ」との言葉をもらい、合格することができました。このトライアウトで結果を出せなかったから、今後も難しいだろうと思っていたので、本当に嬉しかったですね。1年前まで、フェンス越しに見ていた憧れのグラウンドに足を踏み入れた時は、感激でした。
野球+勉強+個性=レギュラー選手
アメリカの野球の良いところは、個々を重んじて様々なプレイスタイルを尊重してくれことですが、その反面、自分を主張していかないと埋もれてしまいます。日本ではあまり自分をアピールすることに気を遣いませんでしたが、アメリカではいかに自分をアピールするかということをよく考えていました。そのためには勉強も大事です。シーズン中は、平均で1週間に3試合、合計40試合程度をこなしながら、大学の授業にも出て勉強もしっかりする、それができてこそ、アメリカの1部リーグのチームではレギュラーになれるのです。それに加え私は日本人選手なので、体の大きさでは勝つことはできない分、スピードで勝たなくてはいけません。チャンスがいつ来てもいいように、準備はしっかりとしていました。また、勉強の不安がプレーに出てしまわないように手を抜かず精一杯勉強する、これも準備の一つであり、厳しい競争の中で勝ち抜いていく秘訣だと思っています。
異国の地でみつける新しい自分
今後、留学をする皆さんには、現地の文化や慣習に触れることのできる場、例えばパーティなど現地の人と交流ができる場所に積極的に足を運んでほしいですね。現地の文化、そこに住む人の考え方や価値観に五感を使って触れることで、日本では感じられないことを感じ楽しむことができ、新しい自分にも出会えることができると思います。異国の地では、違った価値観に戸惑うこともあるかもしれません。しかし、英語を習得して壁を乗り越え、相手の気持ちを理解し自分の気持ちを伝えることができれば、自信にもつながり野球にもよい影響を及ぼすはずです。野球に集中するためにも、まずは英語で自由にコミュニケーションがとれるようになることが大事ですね。
すべては実行することから始まる
留学を通して「実行する」ことの大切さを強く感じました。あれこれ考えてアイデアが浮かんだとしても、それを実行に移さなければ意味がありません。私自身、留学前は自分を出していくことが得意なほうではなかったのですが、実行してみないと良いか悪いかも分からないと気づきました。やってみた後、結果に応じて対策を講じればいいし、それが成長する糧になるとも思うんです。今は、プロになることを目標に、いろいろな方法にチャレンジしています。年齢的にも残された時間は多くありませんが、後悔しないためにもできる限りのことをやり尽くすつもりです。そして好きな野球に限らず、すべてのことに全力を尽すことが大事だと思っています。忠実に努力しながら人生を生き、成長することができれば、多くのいい出会いにも恵まれると信じています!そんな人生を楽しめたら最高ですね。
【取材・文】金木有香
【運営】ベースボールコミュニケーション(BBC)
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